今回は市街化調整区域内の雑種地の評価実例を紹介させていただきます。
相続財産評価における雑種地は基本的にはしんしゃく割合に基づいて評価を行います。
市街化調整区域内にある雑種地の評価
流れとしてはまず周囲の状況が宅地なのか、宅地以外か(農地、山林、原野)、その中間なのかを判定します。
次に比準(比較)する地目が宅地か宅地以外かを決定し、必要に応じてしんしゃく割合を考慮して評価します。
仮に宅地比準だとすると以下の計算式になります。(倍率地域の場合)
(周辺宅地の固定資産税評価額×宅地の評価倍率×奥行価格補正等×しんしゃく割合)-造成費=相続税評価額
雑種地評価で悩ましいのは、このしんしゃく割合をどの程度と判断するかではないでしょうか。
建物の建築の可否は様々な視点から検討する必要があるため、税理士の先生や一般の方には分かりづらい部分が多々あります。
ここで、本評価における対象不動産の概要は下図のとおりです。

対象不動産は市街化調整区域内の雑種地ですが、隣接地には事務所、道路の反対側には住宅が多く見られ周辺には医療施設や工場等も多く見られる等宅地化がある程度進んでいました。
また周辺における宅地の固定資産税評価額は約26,000円、評価倍率は1.1倍でした。
ご依頼いただきました税理士の先生は登記地目は山林ですが、固定資産税課税上の地目は雑種地であることから宅地価格から比準して、しんしゃく割合30%と判断して評価をされていました。
この場合、対象不動産の評価額は下記のとおりです。
財産評価基本通達に基づく評価額:約2,600万円
そこで税理士の先生から時価はもっと低いのではないかと相談を受けて、実際の評価作業に取り掛かりました。
今回の案件では以下の点を重視して評価を行いました。
①市街化調整区域内の雑種地の取引事例価格
宅地転化の期待性を有する雑種地の実際の取引価格を調査するとともに、周辺宅地価格に対してどの程度の水準で取引されているかを調査しました。
②宅地転化の期待性
市街化調整区域内では宅地開発や建物の建築が大きく制限されます。
そこで対象不動産で宅地開発や建物の建築が可能か、可能である場合建物の用途はどのようなものかを調査しました。
③現況地目
固定資産評価上は雑種地とされていましたが、実際の地目はどうなのかを現地調査や航空写真等を基に判定しました。
その結果、実際の利用状況は下図のとおりでした。

実際には土地面積の約3分の1は雑種地ではなく、現況山林でした。
相続財産評価においては雑種地と山林は評価単位が異なるため、分けて評価をすることになります。
これにより評価額も大きく変わることになります。
評価単位の判定や雑種地部分と山林部分の割合については税務署とも協議をし、同意を頂きました。
④裁決事例
雑種地の公表裁決事例は少ないですが、裁決事例要旨も含めて調査し、過去における判断基準を調査しました。
以上を踏まえて評価した結果、最終的な鑑定評価額は下記の様になりました。
不動産鑑定評価額:約1,600万円
不動産鑑定評価を活用したことで、対象不動産の評価額は大幅に下がる結果となりました。
雑種地の取引水準や公法上の規制等を適切に評価に反映させた結果、大幅な評価減を実現できました。
山林面積の判定についても公的資料や航空写真、CAD等を用いて概測数量を求める等、説得力のある数値を採用したこともポイントです。
不動産鑑定評価額による申告も無事是認され、税理士の先生や相続人の方のお役に立つことができて嬉しく思います。
市街化調整区域内の雑種地は、判断要素が多く難しい土地が多いのが現実です。
市街化調整区域内の雑種地の評価でお悩みの際は、是非経験豊富な弊社不動産鑑定士にご相談下さい。
皆様のお悩みを解決することができれば幸いです。
税務対策で不動産鑑定評価を積極的に採用した方が良い不動産は次のような物件です。
お気軽にご相談ください。
①間口の狭い土地
②奥行の長い土地
③形状の悪い土地
④地積規模の大きな土地
⑤道路と高低差のある土地
⑥傾斜地
⑦接道要件に問題のある土地
⑧市街地山林、市街地原野、市街地農地
⑨私道付宅地
⑩市街化調整区域内の土地(宅地、農地、雑種地、山林等)
⑪埋蔵文化財、地下埋設物、土壌汚染のある土地
⑫アパート、店舗等の収益物件
⑬借地権や底地
⑭地代や家賃の評価
⑮大規模工場等取引相場の分からない不動産
⑯純山林の判定業務

㈱愛知県不動産鑑定センター