2017年12月15日
こんにちは。

今回は税務上の固定資産の等価交換の特例及び不動産鑑定評価の活用について説明させていただこうと思います。

まず固定資産の等価交換の特例については所得税法第58条等に規定があります。

特例の適用を受けるための条件を簡単に説明すれば、下記のとおりです。

①土地と土地、建物と建物等同種の固定資産の交換であること。

②交換する資産は1年以上所有するものであること。

③交換の相手方が所有する資産が1年以上所有するものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。

④交換後の資産は、交換前の資産(譲渡する資産)の交換直前の用途と同一の用途に供すること。

⑤交換する両資産の差額が、高額な資産の価額の2割以内であること。

これらすべての条件をクリアすることで、初めて等価交換の特例により、固定資産の譲渡がなかったものとして譲渡所得税が課税されないことになります。

ただし、この特例が受けられる場合でも、相手方から交換差金を受け取った場合はその交換差金が譲渡所得として課税の対象になります。

固定資産の等価交換の特例について1     愛知県不動産鑑定センター




では①から順に見ていきましょう。

①土地と土地、建物と建物同種の固定資産の交換であること。

つまり土地は土地、建物は建物と交換をしなければならないということです。

土地と建物の交換では等価交換の特例を受けることは出来ません。

では借地権と底地ではどうでしょうか?

これは同種の資産として扱われますので、等価交換が可能となります。

ただし幾つかの例外があります。

一つは不動産業者の方が販売目的で所有している土地(例えば分譲用地)は固定資産ではなく、棚卸資産として取り扱われるためこの条件を満たすことができません。

(不動産業者の方が販売目的ではなく、自ら使用している土地なら大丈夫です)

また土地と土地及び建物を交換した場合には、建物は土地と同種の固定資産と認められませんので、建物部分については等価交換の特例を受けることができません。

そのため建物を取得した人は、建物価格に見合うだけの交換差金を受け取ったとして扱われるとともに、建物を譲渡した人は単に建物を譲渡しただけとなります。

加えて、建物価格が高額な資産の価額の2割を超える場合には、等価交換の特例そのものを受けることができません。

言い換えれば建物価格が高額な資産の価額の2割以内であれば、等価交換の特例は受けることが可能です。(交換差金も高額な資産の2割以内であることが必要です)

では実際に例を挙げてみましょう。

例)土地と土地建物の交換

Aさん:土地2,000万円

Bさん:土地1,800万円、建物200万円

土地の差額:200万円

2,000万円×20%=400万円

400万円>200万円のため等価交換の特例を受けることは可能。

交換差金:200万円(譲渡所得の課税対象)

このケースでは、総額は2,000万円で等価ですが、Aさんは200万円の交換差金を貰い、Bさんは建物を200万円で譲渡した扱いとなります。

しかしAさんにとって譲り受ける建物価額(交換差金)は、譲り渡す土地の価額の20%以内であるため等価交換の特例を受けることができます。

仮に建物が500万円であった場合には、先に挙げた400万円を上回ってしまうため土地についても等価交換の特例を受けることができなくなります。

また同じようなケースでも土地と土地は交換、建物は売買とした場合には建物は等価交換の対象ではないため、建物価額については交換差金とは看做されません。

②交換する資産は1年以上所有するものであること。

これについてはあまり問題になることはありませんが、短期所有のものについては特例の適用対象外となります。



③交換の相手方が所有する資産が1年以上所有するものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。

相手方も1年以上所有する資産であり、かつ交換のために取得したものでないことが必要です。

実際に交換のために取得したものかどうかを判断するのは難しいのではないでしょうか。

そのために1年以上所有という期間を設けて判断しているものと考えられます。

例外として、交換した資産をまたすぐに交換する様なケースでは、交換のために取得したと判断される可能性があります。

(交換した1年後にまた別の土地と交換するなど)


④交換後の資産は、交換前の資産(譲渡する資産)の交換直前の用途と同一の用途に供すること。

上記の例で仮にAさんの土地は雑種地、Bさんの土地は宅地でそれを交換した場合、Aさんは交換によって取得した土地を雑種地として利用しなければならないということです。

私自身の経験ですが税務署に確認したところ、市街化区域内であれば基本的には建物の建築は可能ですので、宅地と雑種地では同様の扱いになっていました。

また確定申告書の提出期限までに同様の用途に供することが必要だと回答を受けた記憶があります。


⑤交換する両資産の差額が、高額な資産の価額の2割以内であること。

先のAさんとBさんの間では等価交換の特例を受けられますが、次の場合は特例が受けられないことになります。

Cさん:土地4,000万円

Dさん:土地3,000万円

差額:1,000万円

4,000万円×20%=800万円

800万円<1,000万円

差額が20%を超えるため、要件を満たしません。

このように固定資産の等価交換は様々なルールに適合した場合のみ、特例を受けることができます。

ここで問題となるのは、交換する資産の価格をどう判断するかということです。

不動産の価格には色々な種類がありますが、どの価格を採用するかで結果は大きく異なります。

採用する価格により等価交換の特例を受けられる場合と受けられない場合があります。

次回は、交換する固定資産の等価交換における価格について説明させていただきます。

固定資産の等価交換の特例について1     愛知県不動産鑑定センター



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